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前回のブログで今年の誕生日の話をしましたが、思えば2年前の誕生日に私は運転免許証の自主返納をしました。

ALSになり足が動かなくなってきてからも会社には車椅子で行っていました。通勤は運転を諦めきれなかったので電車ではなく自分の車で、しかもそれは車椅子の人仕様の車ではなく今まで乗っていた車のままでした。まだ多少は動きのよかった左足をブレーキに乗せたままで踏むようにし、力がほとんど入らない右足をアクセルに乗せて右手で右足の太ももを押したり持ち上げたりしてアクセルを踏むという、今考えると何ともアクロバティックで危なっかしい運転をしていました。でも2年前の誕生日に免許更新の時期になってしまったのです。さすがに車椅子では適性試験を通してもらうのは無理だと思い、ついに運転することを諦めて免許証の自主返納をする決心をしました。手続きを済ませると穴がたくさん開けられた自分の免許証と、その代わりに身分証明書となる免許証風のものが戻ってきました。半世紀持っていたこ免許証の返納は私にとっては結構大きなショックの一つでした。実は免許証を取得したのは半世紀前ですが、私の運転歴は長くて小学生の頃からだったのです。(笑)

私の父は私が小学5年生の時に亡くなりました。父は自分が短命であることを察していたのか、私が小学3年生になると車に乗せて校庭や広い場所に私を連れていき、何かあった時に家の仕事の役に立つようにと車の運転を覚えさせてくれていたのです。小学5年生の頃にはしっかり運転ができるようになっていました。運転免許証は取得できる年齢になるとすぐに、今ではそんな制度はありませんが、自動車学校に通うのではなく一発試験というもので取りました。そんないろんな想いある免許証を返納してしまい、これでもう今後一切運転ができなくなるということが現実となったのです。それは足を取られたというだけでなく、働く人間としての?男としての?車に纏わる今までの思い出?・・・何か、よくわかりませんがこれまで自分の中にあった大切な何かをもぎ取られてしまったような、何とも言えない気持ちになっていました。仕事をしている頃はどこに行くにも車でしたし、初めて自分で車を買ってからこの免許証の返納をするまで十数台の車を乗り換えていますから車が好きだったのも確かにあります。今世間では年配者の運転による事故が多くなっていて、第三者として思うことは75歳位になったらいつまでも運転することにこだわらずに免許証の返納をすればいいのに・・・でした。でも自分もこの病気になっていなかったら、身体が動いている間は自分から返納することはきっとなかったかもしれません。免許証がなくなることで行動範囲もせまくなるし、世の中の役に立つことができなくなるような気がするのです。ですから私の免許証返納の決断は相当なものだったのです。

ただ、今思えばこれもその後に起こるこの病気のために決断しなければいけない様々なこと、プライドとか恥ずかしさとかをすべて無くさないと生きていけない次々と思い知らされる辛い現実と比べると、人間として男としての自信なんて可愛いもので免許証の返納もほんの些細な出来事の一つでしたけどね(笑)。



2021年になったばかりと思っていたのに、もう半年が過ぎようとしています。世の中は今も当たり前だった生活が当たり前にできない日々が続いていますが、皆さんはそんな生活にも慣れてしまわれましたか?私は相変わらずベッドで寝たきり状態のため、誰ともお会いすることもできず引きこもりのような生活をしています。

・・・そんな私なのに先日の誕生日に、中学・高校時代の同級生や友達、大学時代の仲間、仕事でお世話になった人、アメリカ、フランスからもたくさんお祝いメッセージを頂いてしまいました。こんな歳になった私の誕生日をまだ覚えていてくれただけでも嬉しいのに温かいメッセージまで、本当にありがとうございました。メッセージを読ませていただきながら、一人一人の顔とその人とのいろいろな懐かしい思い出を振り返って感激していました。でも考えてみると中学・高校時代の同級生や友達とは時々メールのやり取りはありますが会う機会が卒業以来ほとんどなかったので、思い出す顔はその当時の十代の顔だけなんです。何年か前に中学の同級生が「地元にいる同級生で先日何人か集まる機会があったのでその時の写真を送りますね。」と送ってくれたのですが、誰これ?という顔ばかりでした。半世紀という時間の経過は人が全く別人の顔になることもあるんです、凄いですね。(笑)もし今実際に会うことになったら確かにお互い分からずに通り過ぎてしまうかもですが・・・まぁそれはそれで笑って許せるかな。

ただ私はもうそんな皆さんと会える機会もほとんどないので、いつまでも昔のままの記憶、若い頃の面影だけを大切な思い出にしています。

現在世界の人口は77億人と言われていますが、私のような平凡な人間がどんなに頑張っても一生で知り合える人の数はたかが知れています。ですからこれまでに知り合った方々は本当に何かご縁があって知り合えた、私にとってかけがえのない皆さんだと思っています。そしてALSになってからの3年ちょっとで出会えた人達、ALSにならなければきっと一生接点はなかった人達、全く知ることがなかった世界の素晴らしい人達との出会いももちろんです。この病気になって自分一人では何一つできなくなり、思い通りにいかないこと辛いことや葛藤することがこんなに多いとは想像以上でした。だからと言ってALSになっていなかったらもっと楽しいことだけの人生だったろうかというと決してそんなことはなく、病気以外の別の苦しみや辛いことがたくさんあることも承知しています。ですから今はそんな素晴らしい機会の中で出会えた素晴らしい皆さんにサポートしてもらいながら、普通の生活ではできない新しい生き方、普通の生活では知る機会がなかった世界をもっと楽しめるようにしていきたいと誕生日を機会にあらためて思っています。

下記のリンクより御覧ください。

https://youtu.be/DkHuhaTwioE